北海道新聞旭川支社
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北極星

 稲荷桂司(旭川・公務員)*「味わう」を続ける 2017/09/28

 この1年ばかり、太極拳を毎日1本打つことを日課にしている。本や動画で覚えた自己流ながら、毎日調子よく打てているときは爽快で、寝起きもよくなった。自己流で足りない分を補おうと、ちゃんとした師範の本やブログを参考に稽古していると、それらの言葉に思い当たるような経験をするようになってきた。

 どんな稽古事も毎日の継続が大事とされるが、ある師範が、継続そのものより毎日続けられるよう「生活を整える」ことがより重要であり、稽古が途絶えることがあってもそれにとらわれず続けるのがよい、大事なのは目の前の稽古や生活を「味わう」ことだと述べられていた。目からうろこが落ちる思いがした。

 小さい頃から何事も勢い任せで、コツコツと積み上げることが苦手な私は「毎日続ける」ことに強くあこがれていた。しかし何かを始めては挫折することを繰り返すうち、気負いが過ぎて余計に長く続かないという悪循環に陥っていた。

 「毎日続ける」という結果にとらわれず稽古を味わいながら続けてみると、日常の出来事にもブレず冷静に対応できる自分を発見した。東洋で「中」「静」などといわれる境地はこのようなものかとも思った。

 今も毎日続いているわけではないし、本当の「静」を得られてもいないが、それにはとらわれず、目の前の稽古を、生活を、「味わい」ながら淡々と「続けて」いる。


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