北海道新聞旭川支社
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北極星

 國枝保幸(市立稚内病院長)*医局制度 2017/09/26

 昨年度、当院の医師数は29人と過去最少を記録しましたが、本年度は3人の初期研修医を迎え総勢34人で滑り出すことができました。当院の医師たちは北大あるいは旭川医大の「医局」から派遣されています。大学病院の場合、診療科ごとの教授を頂点とする人事組織を「医局」と呼び、診療はもちろん、研究・教育という仕事も行っています。

 そしてもう一つ大事な役割が道内各地の病院に医師を派遣することです。医師派遣先を「関連病院」と呼び、当院内科の派遣元は旧北大第三内科です。第三内科からは血液あるいは消化器内科専門医が全道に派遣され、それぞれ専門の看板を掲げて診療を行っています。

 その中で市立稚内病院は、地域性から総合内科医として内科全般の診療を行っているのが特徴です。担当教授の退官後、2011年度に第三内科は消滅し、「消化器内科」と「血液内科」に分かれます。消化器内科の新しい教授が決まるまでの2年間、新入医局員がゼロであったことから、関連病院の維持が難しくなり、ある関連病院へは医師派遣が中止、当院への派遣も一時期、減員されました。

 04年度の新臨床研修医制度の開始以降、大学医局への入局者の減少から、特に地方の関連病院の減員や撤退が繰り返されてきました。「白い巨塔」に象徴されるような権威と金が渦巻く医局制度は昔の話。安易に地方出張を命じると医局をやめる若い医師もいる昨今、現在の大学医局には地方病院を維持する十分な力はないのです。


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