北海道新聞旭川支社
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北極星

 石黒誠(富良野・写真家)*台風とウグイ 2017/08/24

 小学4年の息子を連れて、自宅近くを流れる空知川へ行った。夏休みの自由研究に川の写真を載せたいらしく、コンパクトカメラを手に私たちは河原に下りた。

 岸寄りの浅くて緩い流れを何げなく見たとき、2センチにも満たないような小さな魚が数匹泳いでいた。「ウグイだ!」。私はつい、うれしくなって大声で息子に知らせた。

 昨年の今ごろ、台風10号をはじめとする大雨で、空知川水系は本流も支流も大増水した。河畔の木々はなぎ倒されて中州や岸に積み重なった。普段は水が来ない高さにまでたまった泥は、踏み込んだ長靴が抜けなくなる深さだった。南富良野町では、川に近い家屋や畑だけでなく、堤が決壊して市街中心部も濁流に襲われた。

 ウグイは春から初夏、川底の小石に産卵する。いま泳いでいる稚魚たちは、それがかえったものだ。川底をさらうような強烈な流れから逃れて、どこかで生き延びたウグイたちがいたということになる。

 空知川にはイトウやアメマス、小さい魚だとフクドジョウやイバラトミヨなどがすんでいて、それぞれに好む環境が違う。

 台風による大きな「かく乱」の後で、河畔林や水生昆虫なども含めた河川の生態系がどう変化し、回復していくのか、ちゃんと気にかけておきたいと思った。


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