北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

 斎藤美和(富良野・教諭)*ケーキの日 2017/07/25

 「毎月20日はケーキの日」。1年前に娘と交わした取り決めだ。どうしてこの日ができたのか、こんなエピソードがある。

 昨年7月の帰り道。「ママ、たぶんだめって言うと思うけど、きょうケーキ買って帰らない?」。娘がもじもじ。だめっと言いかけてやめた。あれ、何かおかしいぞ。学校で何かあったかな。直感が走る。「いいよ。お母さんもケーキ食べたかったんだ」

 フラノビジューのドアを開けると、そこは魔法の空間。店いっぱいに富良野産ラブスイーツがあふれる。色とりどりのフルーツ、作業工程が全て見えるパントリー、店長さんと奥さまの安心安全へのこだわり。

 チョコレートケーキを二つ買って帰った。二口食べると、「嫌なことあった。男子が、ひかるの腕が毛深いって男みたいだって言うの」「そうか、それは嫌な思いをしたね」。赤い目をぬぐい、頭をゆっくりなでた。「次言われたら、やめてって言うんだよ」「うん」。ケーキを食べ終わるころ、涙が消えた。育児にイライラしていた私のイライラも消えた。ケーキの力は偉大。チョコレートケーキの魔法がわれわれ親子を笑顔にしてしまった。

 今月もケーキの日がやってきた。娘はショーケースに張りつく。店長さんを待たせ、バナナとチョコの「パケバナーヌ」と7種のぎっしりフルーツ「プリンパフェ」に決めた。

 いつかは終わりが来るケーキタイム。娘のピンチやチャンスのサインを受け止めたい。


戻る