北海道新聞旭川支社
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北極星

 大谷真樹子(旭川・おでん屋店主)*会いにきてくれた 2017/07/04

 4月1日は、父が健在なら101歳の誕生日でした。

 バースデーには大好きだったアップルパイをいつも買っていました。今年は、どうせ私が食べるのだから買わなくてもいいかな―と思いながら落ち葉を片付けていました。

 昨年は根雪が早く、店の前の梅や海棠(かいどう)にたくさんの葉がついたまま雪が積もり、雪解けとともに落ち葉が目立っていました。それらを片付けながら、ひょいと頭を上げると、道の角に黄色い上着を着た人がこちらを見ています。

 あまりじろじろ見ても悪いと思い、掃除をして、もういちど顔を上げるとその人がいません。こんな短時間でどこかに行ったとも思えません。

 そこで「はっ」と気付きました。あの黄色の上着、あの人は父だったのではないかしら、杖(つえ)もついていたような気もするし…。

 「今日はお父さんの誕生日なんだよ、お菓子買わないのかい」と、会いに来てくれたんだ! 落ち葉どころではありません。すぐにアップルパイを買いに行きました。

 夜、お店に来てくれた友人にこの話をしました。「それはお父さん、会いに来てくれたのよ」から始まり、彼女の体験も聞かせてもらいました。

 そのあと「お父さん誕生日おめでとう、ごちそうさま」と言いつつ、お客さまたちと一口ずつパイを味わいました。


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