北海道新聞旭川支社
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北極星

 嶋崎暁啓(豊富・NPO職員)*ある小鳥の危機 2017/06/29

 フィヨフィヨ、フィーフィヨフィー。初夏のサロベツ湿原に涼しげな野鳥の声が響く。声の主はシマアオジ。今年も無事に湿原に渡ってきた。しかし、この名前を聞いて、胸の黄色い小鳥の姿や「草原のフルート奏者」と評される美しい鳴き声をイメージできるのは、よほどの野鳥好きぐらいだろう。

 シマアオジは東南アジアなどで越冬し、夏の間は大陸から北海道に飛来、子育てする小鳥だ。全国的にもほとんど知られていないこの鳥が、絶滅の危機にひんしている。かつてシマアオジは珍しい鳥ではなかった。1985年に行われたサロベツの鳥の調査結果を見る限り、ノビタキと同様に普通に見られたようだ。

 しかし、その後は急速に生息数が減り、2006年からは環境省のレッドリストで最も絶滅の恐れが高い絶滅危惧IA類に指定されている。このランクにはシマフクロウやヤンバルクイナなど誰もが耳にしたことがある種も入る。

 最近の調査で、国内ではサロベツ以外の場所で確認できなくなっているようだ。しかも、そのサロベツでさえ生息数は5つがい程度。減少した原因は何か? 私たちに何ができるのか? 湿原センターでシマアオジに関する展示を始めた。まずはこの鳥のことを知ってもらい、一緒に考える仲間になってほしい。せめてサロベツにいる時くらい安心して過ごせるように…。


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