身長140センチ、体重37キロの小さな体で、重い鉄の塊であるプレス機を操り、細密な銅版画を刷り上げるパワーには圧倒される。 士別市在住の版画家小池暢子さんの80歳を祝う作品展が市内で開かれている。専門の銅版画だけでなく、13歳の習作からデッサン、水彩、コラージュ、油絵など127点が展示されていて圧巻である。オープニングでは1964年の東京五輪の際、国立競技場のモザイクアートの制作に現場監督として関わったことで岡本太郎氏と親交が始まったことや、14年間に及ぶパリでの制作の日々が語られた。 今月14日の誕生日のトークショーでは、一般には知られていなかった小池さんの技法が紹介された。棒状の道具で複数の色を塗り分けて刷る一版多色刷りの「アラプペ技法」で、1枚の版に長い時間をかけて細かく色付けをして刷り上げる。その技法を学びたいと、世界各地から多くの版画家が小池さんの門をたたいたが、細かい仕事を根気よくこなせる日本人以外には無理だとギブアップしたということだ。 色付けする明るい色が混じり合うことなく鮮やかに刷り上がることで、特有のメルヘンに満ちた世界が現出される。小池さんの作品は米国ニューヨークのメトロポリタン美術館をはじめ世界各地の美術館に収蔵、展示されている。 |