野生動物の体温や動きを感知してシャッターを切る自動撮影カメラが1万円くらいから売られている。 外見は小さな弁当箱みたいで、センサーや小型のレンズがうまく収納されている。 記録用のSDカードを差し込み、単3電池を8本入れて、いくつかの設定を済ませてスイッチオン。撮る枚数が少なければ長い時で1年間も作動し続ける。 使えばきっと野生動物たちの生き生きとした表情が撮れるはずだし、自動で撮る手法自体は昔から使われている。 でも写真って自分の目で見ていいなと思った瞬間に撮るものではないのか。そんな思いから、なんとなく手を出さずにいたが結局、早春から直感を信じて使うことにした。 エゾシカの死骸にやって来るオオワシやオジロワシが画面いっぱいに写る。薄暗い森を巨大なヒグマがこちらへ歩いて来る。毎晩のようにタヌキが家族連れで獣道を行く。 自動撮影カメラの記録したものは悔しいほど神秘的で、自分がそこで待機したなら決して撮れない写真ばかりだった。 カメラはもともと機械的に記録する道具にほかならない。普段見えないものを可視化するのが写真の力のひとつなら、自動撮影をもうちょっと信用して続けようかな、と思っている。 |