北海道新聞旭川支社
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北極星

 伊藤由紀子(留萌・主婦)*ジャガイモ 2017/06/13

 今春も裏の庭に一番先にまいたのはジャガイモ2種類。煮るとほくほくする男爵と、おでんに入れても煮くずれしないメークイン。

 35年前からジャガイモをまいているが、刈った雑草を畝の上にかぶせておくと、市販のフィルム「マルチ」の代わりになって良いと聞いたので、好奇心の強い素人農家は早速やってみた。フキの葉っぱもかぶせてみたが、すげがさのようでなかなかかわいい。

 幼い頃は戦後の食糧難で、ジャガイモはごちそうだった。両親が札幌の三角山の斜面を借りて作ってくれたジャガイモは何よりありがたかった。今でもジャガイモには特別な思いがあり、自家製のイモは全部食べている。昔、母は着物を食料品と交換し、父は斜面の畑で育てたイモを夏の終わりに家の前の防空壕(ごう)跡に入れてふたをし、1年分の食料とした。それをバケツに入れて家に運ぶのが、小学1年生の私の役目だった。

 壕の中は狭くて暗くて怖かった。今は見事な狭所恐怖症で、大きな音のする所にも行けない。幼い頃、防空壕で敵機の低空飛行のごう音におびえた記憶が残っているらしい。

 大国に戦いを挑んで多くの命を失い、負けてまだ71年しかたっていないのに、憲法を変えるとか戦争ができる国にするとか、きな臭くなってきている。平和の香りは消えていくのか。


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