人生には、上り坂と下り坂、そして「まさか」という坂がある、とあるドラマで言っていた。 例年通り3月中旬にはじまったオホーツクに海明けを告げる「毛がに漁」は、水揚げが順調にすすみ、もう規定量に達して終わろうとしている。いつもは家業の手伝いでその出荷を手伝い、初モノを一口食べて春を感じるのだけれど、そういえば今年は、口にしていない、という「まさか」に気がついた。 雪がとけ、フキノトウがまず芽をだし、湿地にはミズバショウが咲き始めた。それでもまだ、くすんだ色合いの多い野山なので、目からの春の訪れはもう少し先になりそうだ。一夜にして真っ白になった日もある。 前浜にも出かけていないし、ギョウジャニンニクの生えている場所にも行っていない。 それでも季節は当たり前に巡っているようで、それを受けとめていないのはこちら側の都合だ。 人生の「まさか」をドラマで楽しんでいただけでは済まなかった今年の春。 ヤマワサビをたっぷりと下ろし、春のニシンやサクラマスに添えて食べる。ツンとした辛さとホクッとしてやわらかな身を味わい、五感を呼び起こそう。彩り鮮やかな春は「まさか」と思うくらい一気にやってくるのだから。 |