先日、病院の待合室で、久しぶりにIさんに出会った。神経を患って施設に入っても、催しの時にはいつもニコニコしながら最前列で楽しむIさん。かつて芝居の常連客で、私の演劇仲間の名前を挙げながら「また安川さんの芝居が見たいな」と語った。 ふと、付添婦として長年頑張ってきたOさんを思い出した。生活は大変で税の支払いが滞ることもあった。ある日、市役所で税の徴収を担当しているT君に呼ばれた。「演劇のポスターを見て、どうしても劇を見たくなった。Tさんは今月の納税は待つと言ってくれたから、チケットが欲しい」と私に言うOさん。T君は「来月待っているから」とその場を離れた。 ひと月ほど前に転入してきた道新の記者がコラムで書いた「士別の人々が明るい理由は、自分の生活を豊かだと感じている人が多いからだ」という捉え方が頭に浮かんだ。 士別では、生活の扶助を受けているような社会的に弱い人たちが文化を享受することを、抵抗なく受け入れる雰囲気がある。雇用保険などを受給している人が、有料の音楽会や演劇公演に出掛けても批判などされない。このことは、まちの豊かさのためにとても大切なことであり、一方で、このまちで享受できる文化をしっかりと供給し続ける大変さも心に掛かる。 |