北海道新聞旭川支社
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北極星

 柴田えみ子(旭川・尊厳死協会道支部理事)*死を考える 2017/04/13

 「悲惨な死をなくすための愛の運動」と銘打った尊厳死の講演活動が10年を過ぎました。

 先日、講演後に婦人が話しかけてきました。高齢の夫が延命治療の末、苦しんで亡くなったそうです。医師にやめてほしいと頼んだが「最期まで最善を尽くすのが医師の務め。あなたはご主人を見殺しにする気か」と迫られ、深く傷ついたと涙を流しました。

 アメリカの友人スーザンは、患者の人権や人間性を無視した日本の高齢末期患者の延命治療は「非常識」と言い切ります。また「人生は長さでなく、どう生きたかだ」と言います。

 現状では、事前に延命拒否の意思を明確にしない限り、いったん開始された延命治療をやめることは困難です。アメリカ国民の延命拒否の書面保持率は40%近くだそうです。ドイツは12%というデータがあります。しかし、日本は何と国民全体の1%未満でしかありません。

 ただ、昨今は医療の現場や国民の間で尊厳ある死を考えようという風潮になってきました。生きとし生けるものは全て死を迎えます。元気なうちに自分の死について考え、家族と話し合っておくことは大切です。

 「死」を考えることは「生」を考えることにほかなりません。一人一人が自分の人生や命に責任を持ち、安らかな最期を迎えたいものですね。


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