北海道新聞旭川支社
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北極星

藤沢隆史(礼文町教委主任学芸員)*思いをつなぐ紙テープ  2017/03/28

 日増しに暖かみが感じられ、雪溶けが進むこの時期、人々は、進学や就職、転勤など、新たな生活に少しの不安と大きな希望を抱いているだろう。

 3月末、礼文島の玄関口であるフェリーターミナルは、島外へ転出する人たちの見送りで混雑する。

 フェリーの別れは、独特な雰囲気が漂い、とても感傷的である。この雰囲気をかもし出すのに一役買うのが、色とりどりの紙テープである。

 このテープは、見送られる人の乗船時に合わせて、その先端がフェリーの欄干にまとめてくくり付けられる。見送られる人はその前に立ち、見送る人々はテープを持って出港を待つ。

 出港までの数分間、人々はテープの向こうに互いの姿を見つめ合う。この時間は、人々が互いに思いをかよわせる時間であり、さまざまなテープの色は、人々のさまざまな思いを表しているようにも見える。

 出港の汽笛が鳴り、船が進むにしたがってテープは伸びていき、ついには切れてしまう。テープは切れても、島で暮らしたさまざまな思いが切れることはないだろう。

 こうした別れの数日後には、新たな人たちが島にやってくる。フェリーターミナルは、迎えの人たちで再びにぎわいを見せる。

 こうして、人々の心に新たな思いが生まれ、いつか来るであろう別れの日には、互いに思いをかよわせるのである。


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