北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

奥野真人(焼尻・元地域おこし協力隊員)*「恩恵に報いる」ということ  2017/03/16

 焼尻に移住して4年目の冬も終わりが間近だ。僕の直近の目標は4月29日のゲストハウス開業。昨年から続く準備もいよいよ大詰めを迎えている。

 今ヒシヒシと感じているのは周辺の方々の厚意だ。誤解を恐れずに言えば、移住してしばらく僕は島の人はドライだと思っていた。人口約200人、今も減少傾向にある小さな焼尻島。定住は容易でないことを島の人もいたく分かっている。だからこそ、日々を共に楽しむ間柄だったとしてもそれ以上の強い結びつきは求めない。「来る者拒まず、去る者追わず」という印象だったのだ。

 しかし、宿の開業を掲げてしばらくたった今、この持論は変わり始めた。最近の僕は、島の方々から多大な恩恵を受けている。例えば、建物の改修作業。不器用な僕に出来ることなど限られているが、それでも少しずつ仕事が進んでいるのは、技術で補ってくれる人が身近にいるからだ。作業をのぞき込んで差し入れを頂くこともある。すれ違いざま声を掛けてもらうことも増えた。本当に本当に、感謝してもし尽くせない。

 対して僕は何ができるだろうか。島民歴4年目を迎えてもなお僕ができることはそれほど多くない。「恩恵に報いる」ということの明確な答えもまだない。せめて開業という目の前の目標を達成したいと思う。


戻る