今年も羊の出産ラッシュが始まった。親羊の母乳が十分であれば手がかからないのだが、乳房炎の後遺症や親羊の育児放棄などで哺乳の必要な子羊も多く、この時期は本当に大変だ。 忙しい思いをする割に、もうからないのが羊の畜産。羊は経済動物と呼ぶにはあまりにも生産性が低い。年に1度の出産で、1匹かよくて双子。子羊は半年育てて出荷するが、枝肉として売れるのは30キロくらい。豚の場合は一度に12匹くらい生まれ、1匹で70キロもの枝肉になる。この生産量の差! 羊肉が多少高くても、もうかるものではない。 生産性の問題を少しでも改善しようと士別ではサフォーク羊に多産系のロマノフ羊を交配させる試みがあった。2007年には五つ子が誕生したが、それ以降の進展はない。 そのことを残念に思うと同時に安心もしている。わが家で三つ子が生まれることがあるが、羊の乳首はふたつしかない。交代で飲もうにも母乳量が足りない。結局は哺乳が必要になるし、多産になれば子羊も小さく弱いし、親羊も疲弊する。動物にとって出産はやはり一大事なのだ。経済動物だって生む機械ではない。難産に立ち会うと、もうからなくてもいい、1匹でいいから丈夫に生まれてほしいと願ってしまう。もちろん、元気な双子が生まれるのが一番うれしいのだが。 |