医療崩壊という言葉が生まれたきっかけは、2004年度に始まった新臨床研修医制度でした。 総合的に患者を診る医者を養成してこなかった教育システムを変えなくてはという動きが大学を中心に始まりつつあった時期に、厚労省は当時の医師教育制度の土台を全く無視して、この新しい制度を導入しました。これを境に、大学の医局に入るのが当たり前だった医師のたまごたちが、都会の大病院に出て行ったわけです。 そして大学医局の医師確保が難しくなり、特に地方病院への医師派遣打ち切りが始まることになりました。 医療崩壊の始まりです。 このことが国会で問題になったわけですが、厚労省の役人は「日本の医師数は充足しています。偏在しているだけです…」と。では、お役人の言ったことは正しかったでしょうか。 経済協力開発機構(OECD)加盟国(いわゆる先進国)の比較では、日本の医師数は人口千人あたり約2・0人で、先進国の平均値3・0人と比較すると明らかに少ないのです。 さらに日本国内でみると、埼玉で1・5人以下、東京で2・5人以上と地域でかなりばらつきます。北海道は約2・0人で全国平均と同じ程度ですが、カバーする土地の広さを考えると相対的には医師が少ないということになります。 宗谷管内の2012年度末の医師数は、人口千人あたり0・938人と報告されており、道内一の医療過疎地域なのです。その分、一人の医師にかかる負担も大きくなるわけです。 |