北海道新聞旭川支社
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北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO事務局長)*冬の森は別世界  2017/02/10

 サラサラとかすかな音を立てて雪が降り注ぐ。見上げると青空が広がり、風に揺られた枝から舞う雪がキラキラとまぶしい。

 ここはサロベツ湿原センター前の森。近くには車が行き来する道路も走っている。しかし、森の中に一歩入ると深い静寂に包まれる。外界から完全に隔離されたような感覚はまさに非日常。見た目以上に迷いやすい森なので、スノーシューを履き、念のためコンパスを持って入る。

 最初はダケカンバの明るい森。キノコや冬芽などを見ながら進むと、次にアカエゾマツの鬱蒼(うっそう)とした森に。雪を冠した針葉樹の森は北欧神話に出てくるような神秘的な雰囲気だ。さらに進むと急に開けた場所に出て、そこには大人2、3人が入れる天然の「かまくら」がある。

 近くに寄ると、かまくらを形づくる正体はアカエゾマツだと分かる。幹や枝が雪の重みでグニャリと曲がり、中が空洞になっている。雪が多い年でないと奇麗な形にならないため、幻のかまくらでもある。

 もう少し歩くと広葉樹の森に入り、ミズナラの巨木が迎えてくれる。樹齢は不明だが、おそらく数百年はたっているだろう。大きな樹洞を持ち、姿には威厳がある。その昔、湿原に人が開拓に入る前から生きてきた森の主に違いない。

 顔に当たる風が徐々に強まっていくのが分かる。そして突然に森を抜け、広大な雪原に出た。サロベツ湿原だ。湿原に出た瞬間は、言葉ではうまく形容できない爽快感がある。

 冬の森には不思議なものや美しいもの、新しい出合い、発見があり、身近な場所でも冒険気分を味わえる。この冬はスノーシューを履いて自然の中に出かけてみてはいかがだろうか。


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