北海道新聞旭川支社
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北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO事務局長)*ドングリ輝く森づくり   2016/11/18

 今年は道内であまり良くなかったミズナラの実り。ところがサロベツではこの5年ほどで一番の大豊作となった。実ったドングリは、森に生きる多くの動物たちのおなかを満たしてくれたことだろう。

 道北の日本海沿岸には稚咲内砂丘林という森が南北に25キロ以上続いている。私たちはここでミズナラの森づくりを進めている。砂丘の上に数千年かけてできた珍しい森は、独特の景観と優れた自然環境を有し、国立公園の特別保護地区に指定されている。

 しかし過去の人間活動の影響で約3ヘクタールが失われたため、2005年から地域住民とNPO、行政などが一体となった再生活動が始まった。合言葉は「どんグリーンの森づくり」。ユニークな「どんグリーン」という名前は、今は廃校になった地元小学校の最後の児童たちが名付けてくれた。

 こうして始まった森林再生だが、その道のりは非常に険しいものだった。強い潮風が吹き付ける厳しい条件に加え、土壌がほとんどない場所のため、最初の5年ほどは失敗に次ぐ失敗。せっかく住民総出で集めた1万個の現地産ドングリが全滅した年もあった。

 くじけそうになる気持ちを奮い立たせ、途中からは苗木を育ててから植樹する方法に切り替えた。その後は軌道に乗り始め、12年目を迎えた今年、最初のころの苗木が立派に育ち、ついに実を結んだ。宝石のように光り輝くドングリを眺めながら、これまでの苦労が報われるような大きな手応えを感じた。

 今までに活動に関わってきた方は延べ1500人以上、約5千本を植樹してきた。苗木が育って森になるのはずっとずっと先の未来だが、一人一人の熱い思いが、この木々を着実に育んでいる。


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