今夏、富良野市の鳥沼公園で起きた“珍事”が少々世間をにぎわせた。公園の沼は普段、透明度の高い清冽(せいれつ)な湧水をたたえる。ところが、8月中旬以降の台風7号、9号、11号の連続上陸の後、沼が「青く」なったのだ。 8月末に問い合わせを受け、見に行くと、確かに「青く」見えなくもない。すでに「青い沼」ブームが起きていて、沼のほとりにスマホを片手に撮影する人々が居並び、テレビ局の取材もあったらしい。 ちょうど美瑛町白金の「青い池」が一時閉鎖され、“代用”として「青い」鳥沼にスポットライトがあたったのである。珍事は約1カ月続いたが、今は透明度の高い本来の姿に落ち着き、水面には飛来した冬鳥がたたずんでいる。 正直、はっきりした原因は分からないが、台風が来た直後とあって、風雨の影響と考えざるをえない。推測するに、湧水口周辺と沼の底に沈殿する溶結凝灰岩起源の泥の粒子が舞い上がり、入浴剤をかき混ぜたかのごとく白濁したことが「青い沼」の正体ではないか。いわば自然のいたずらで、晴れた日には白く濁った沼が光の加減で「青く」見えたのだろう。 この期間に鳥沼公園を訪れた多くの方が周知の「富良野」とは異なる魅力を体感できたのではないか。鳥沼公園は開拓以前の富良野盆地の原風景を残すシンボリックな空間だ。豊かな自然と富良野の歴史を包み込むこのコンパクトな「野外博物館」にこれからも訪れてもらえたら、うれしい。
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