北海道新聞旭川支社
Hokkaido shimbun press Asahikawa branch

北極星

安川としお(士別・朗読パフォーマー)*文化の根付き  2016/09/17

 バチの動きが止まった途端、思わず「ブラボー!」という声が出た。大きな拍手とともに、そこかしこから「アンコール」の声が上がった。「こんな激しい演奏の後、まさかアンコールはあるまい」という予測に反して、ステージは至極当然のようにアンコールへと向かった。演奏が終わった時、またしても「いよう、日本一!」と叫んでいる自分に驚いた。

 先日、士別市のあさひサンライズホールで催された朝日中学校学校祭を締めくくる3年生の和太鼓の演奏は、まさに想像を絶する素晴らしさだった。

 二十数年前、「まちにホールを」との思いが凝縮されて立ち現れたサンライズホール。まち全体が創作・創造へと大きく動きだした。学校関係者の覚醒した文化意識と連動して、ホールを使っての学校祭は19回を数える。

 長らく地域で活動を続けてきた岩尾内太鼓。十数年間毎年、朝日合宿でステージを練り上げてきた和太鼓演奏集団・鬼太鼓座(おんでこざ)。この二つのスピリッツを、7人の打ち手たちは並外れた頑張りによって、見事におのが身と心に取り込み、地域の文化の蓄積が結実する瞬間を生み出した。文化が根付くとはまさにこういうことなのだ。

 この演奏に触れた下級生や小学生が「自分もいつかは…」と憧れを持つことで、文化は確実に継承される。終演後、ロビーで感動を伝えるために握手を交わした7人の手は、あたたかく、やわらかく、そしてたくましかった。


戻る