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北極星

嶋崎暁啓(豊富・NPO事務局長)*自然再生の最前線へ  2016/09/10

 人ひとり、やっと歩けるような細い木道が湿原の奥へと続く。そのまま40分ほど進んだ先、突然目の前が開け、茶色の泥炭が露出してスゲ類がまばらに生える不思議な光景が広がった。

 実はここ、一般公開されていない泥炭採掘跡地で、環境省が実施している自然再生事業地の一つ。サロベツ湿原では、1970年から2002年までに約150ヘクタールに及ぶ泥炭採掘が行われ、土壌改良材などの製品として全国に出荷されていった。現在、泥炭採掘跡は国立公園に編入され、緩やかに植生の回復が進む。

 このように過去の人間活動で失われた自然を回復させるため、サロベツでは05年に自然再生協議会が発足し、関係する行政機関や地域住民らが協力して再生の取り組みを進めてきた。11年に開館したサロベツ湿原センターは、サロベツの自然の素晴らしさを伝えるとともに、自然再生を伝える拠点としても整備され、各種展示が充実している。

 とはいえ、文字や写真をたくさん見たところで、やはり実際に現場に行かないと実感が湧かないだろう。本年度から始まったサロベツ湿原バックヤードツアーは、普段は決して入ることができない調査用木道を歩き、自然再生事業の最前線を見学する無料ツアー。幅の狭い簡易な木道のため定員は6人限定となっているが、人数が少ない分、より深く湿原と人々の歴史や採掘跡地の再生を知ることができると好評だ。

 ツアーは7月に始まり、10月まで定期的に開催している。これからサロベツにお越しの方は事前に予約された上で、ぜひ参加してほしいと思います。


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