北海道新聞旭川支社
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北極星

村山修(枝幸・ダイニングバー店主)*サケ漁、はじまる  2016/09/09

 「船舶の航行に注意して下さい」という通知が、先月下旬、各漁家に回った。大量の根付き流木が海上を漂っていたのだ。

 9月、オホーツクはサケの定置網漁がはじまる。

 台風の思いがけない進み方で、あちこちの河川からあふれた木々が、海流にのって海を旅しはじめたのだった。などと思いを巡らせている場合ではなく、大漁を願って準備していた定置網に大量の流木では、出鼻(でばな)を挫(くじ)かれてしまう。昨年は最高の水揚げ高を更新しつつも最終盤の大時化(しけ)で、唐突に漁が終わってしまった。

 そして、今年の台風。道内各地に被害をもたらして8月が終わった。これからが例年だとハイシーズンになるので、心配は尽きない。例年並み、とか、平年比という言葉が役に立たないようになってきた。高めの海水温や、魚種や回遊時期の変化などやはり心配は尽きない。

 でも、心配ばかりしても仕方がない。というより、心配なのは、秋の味を実感するサケを、いつものように口に運べるか、に尽きる。もちろん、すでにハシリのそれは美味(おい)しく頂いたのだけれど。晩秋のメジカの時期まで、順調に漁が続いてくれますように、と前の浜をみると、巨大な流木が、まだ、漂っていた。


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