北海道新聞旭川支社
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北極星

沢田健(富良野市博物館学芸員)*小さなスキー場の大きな看板  2016/08/22

 先日、「懐かしいものを見つけたわ。興味ある?」と役所の先輩からスマホの画像を見せられた。この先輩、普通の人なら行かないレアな場所の探索が好きなようで、以前もある山中で見つけたれんが造り建築の画像を見せていただいたことがあった。日頃お世話になっているご尊父の血を受け継ぎ、博物学の感覚も持った面白い方だ。

 新ネタは山部にあった約40年前のスキー場の看板だった。後日、現地を案内いただくと、若木が林立したやぶの中に身を隠していたが、確かに丸太を縦にひいた3メートル弱長の大きな看板があり、流麗な筆で「やまびこスキー場」と記されていた。

 やまびこスキー場は、1978年に山部小学校の保護者や教員、地域の体育振興会などの労力奉仕によって、市街地にほど近い東京大学北海道演習林の斜面に設置され、学校のスキー授業や冬季のレクリエーションに重宝された。かつては各地に、このような住民手づくりの小さな「里山」スキー場があったはず。富良野市には北の峰に本格的なスキー場があるので、やまびこスキー場は10年ほどで無用になったと聞くが、当時の方々には思い出深い場所に違いない。

 風雨にさらされ続けた看板は朽ちかけていたが、支柱の立木から丁重に取り外し、水洗・防虫処理を施して、博物館に収蔵した。まだ比較的新しい時代のものだが、地域の歴史と思い出が刻まれた大切な資料だ。収集前には、当時の写真と合わせて展示しようと勇んでいたが、画像で見た感覚よりも実際にはあまりに大きかったので、さてどうしたものかと頭を悩ませている。


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