北海道新聞旭川支社
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北極星

森川理加子(士別・演劇集団主宰)*自然相手の難しさ   2016/08/06

 先日の大雨では、近隣市町村で土砂崩れが起きたとか、畑や道路が冠水したとか大騒ぎだったが、わが家周辺の道路も畑から流れ出した土砂で埋まり、危うく陸の孤島になりかけた。

 こうした被害で思い出すのは、10年ほど前のある夕方、私の住む川西地域を襲った集中豪雨である。

 短い時間ではあったが、降雨量は尋常ではなく、道路下にある羊の畜舎は畑からの土砂が流れ込み、水がある程度引けた状態で残された土砂は高さ1メートルに及んだ。当然、中にいた羊たちは、田んぼのような泥水の中で身動きもとれず悲鳴をあげていて、さすがに能天気な私も焦った。

 その後、家族総出の手作業で畜舎の泥を片付け、なんとか羊たちを乾いた敷きわらの上で寝かすことができたのは深夜12時を過ぎていた。

 あの時は本当に大変だった。土砂をある程度出したところで、羊たちに餌も与えなければならないが、餌も草も泥だらけ。新たに倉庫から運ぶにも、そこらじゅう泥濘(でいねい)で歩くこともままならない状態。何をやるにしてもいつもの倍の時間と労力が必要だった。

 そんな中、ふと気づくと羊の背中にミミズらしきものが。つまんでみると、それはネズミの尻尾。ネズミは羊の毛の中で震えながらしがみついていたのだ。いつもは憎たらしいネズミに少しだけ和んだ瞬間だった。

 今回の雨はあれほどではないにしろ、畑の被害はいかほどか。ここ数年は豪雨の被害も増えた。自然相手の仕事は厳しい。


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