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北極星

近江美智子(留萌・飲食店店主)*降りてゆく生き方  2016/07/30

 7月初め、遠方に住んでいる、私と同じ60代半ばの友達からメールがきた。

 「今月で今の仕事を辞めることにしたよ。これからは体に軽い仕事を探すよ」

 彼女は大手銀行の独身寮の食事作りを13年間してきた。約30人分の朝食、夕食を用意するのだが、作り手は彼女1人、皿洗いの補助が1人。毎日2人で大宴会の用意をしているようなもので、同じく食の仕事に関わっている私は、その大変さは半端なものではないと思っていた。

 彼女は体力の限界を感じ年齢に見合った仕事と生き方をすべく、大きくかじを切ったのだ。私も今年からイベントへの出店をやめ、体の負担を軽くする方向でいたので、彼女の気持ちがよく分かった。

 メールを読み、昔見た「降りてゆく生き方」という映画を思い出した。定年を迎えた男性が新たなフィールドで、てんやわんやしながらも生きがいを見つけていくストーリーだったと思う。

 働き盛りの年齢を過ぎたので少しずつ身軽にし、ゆったりと過ごしていきたい。そんな気持ちから、家を離れていた息子を呼び戻し、家業をバトンタッチしようと、7月から店に出てもらっている。彼は若い発想で次々と新たな経営の提案をしてくる。彼のやる気を尊重し、それらを軌道に乗せるには私の協力も必要なので、もう一踏ん張り働かなくてはならない。まだまだ降りている場合ではなさそうだ。


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