北海道新聞旭川支社
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北極星

藤沢隆史(礼文町教委主任学芸員)*島の宝を未来へ  2016/06/10

 日本最北の島礼文島には、宝と呼べるものがたくさんある。観光地のこの島の売りは、可憐(かれん)な高山植物、豊富な海産物、離島ならではの風景など、豊かな自然環境にある。自然は地域住民にとっても大切で、未来へ伝え残すべき宝物だ。

 高山植物に関しては、行政が中心となり保護活動に取り組んできたが、近年、行政と住民が協働して行うプロジェクトが立ち上がった。現在、島内の自然歩道について、管理方法などについて検討を重ねている。

 高山植物を山の宝とするなら、海の宝は利尻昆布やウニといった高級品からホッケ、タラなど、必需品ならぬ「必需魚」だろう。

 現在まで基幹産業の水産業を維持、発展させてきた先人の苦労は並大抵ではなかった。時には命にかかわる海での漁を生業としてきた人々によって、海の宝が守られてきたからこそ、私たちは日々、当たり前のように食べることができる。

 最後にもう一つ。昔から一部の関係者だけに知られてきた宝がある。それは「遺跡」である。縄文時代から江戸時代まで、島の各地で集落跡やお墓跡などが見つかっており、太古の昔から人々が北の海を行き交い、暮らしを営んでいた。

 出土品には、国の重要文化財に指定されたものもあり、埋もれた「地の宝」として注目される存在になりつつある。日本古代史のある偉人が制定したと言われる「十七条の憲法」には「篤(あつ)く三宝を敬え」という一文がある。文中の三宝が指す意味とは異なるが、私も一島民として島の三宝を敬い、次世代に託すため、力を尽くしたい。


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