30年来の友人は4月が誕生日で、先日、お酒を贈った。そういうやりとりが途切れることなく続いているのは、2人とも、お酒が大好きだからという共通点があるからだろうか。 そもそもは、高校の同期なのだけれど、同じクラスになったことも部活が一緒だったわけでもないので、不思議な縁だ。 4月。新しい環境に身をおく方が多い時期になった。出会いの春。だいぶ昔のことなので、よく覚えていないけれど、たぶん、彼とも新学期にめぐりあったのだろう。 高校進学のため、生まれ育った場所を離れ、小中学校と9年間一緒だった同級生もいない、そんな春を、下宿という初めての共同生活に不安があったのかどうかも、もう、実は、思い出せない。もしかすると、はしゃいだ気持ちだったのかもしれない。何しろ新しい経験がはじまるのだから。そして、親は、そっと見守ってくれていた。 せっかくの4月。不安や希望のごちゃまぜの新しい環境を、自身で経験する機会なのだから楽しみたい。 4月生まれの僕の友人は、おそらくラッキーなことに、はじまった枝幸の毛がに漁の恩恵をまともに受け、お酒の荷物のなかに梱包(こんぽう)されている毛がにを誕生日に受け取る。 流氷に閉ざされていた枝幸港は、もう目覚めた。それはいつもの春のことだけれど、いつものなかに、もしかすると、出会いがころがっているのかもしれない。
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