北海道新聞旭川支社
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北極星

有村幸盛(旭川・文化団体事務局長)*四方良し  2016/04/08

 近江商人の商哲学に「売り手良し、買い手良し、世間良しで三方良し」という有名な言葉があります。自らの利益だけでなく、お客さまに喜んでもらい、さらには社会に貢献できてこそ良い商売であるという考え方です。この精神は時代を越えて現在まで引き継がれています。

 最近、三方良しにもう一つを加えた「四方良し」という考え方があることを知りました。四つ目には「未来良し」「働き手良し」「地球良し」といった説があります。いずれも大事ですが、私はまず「働き手良し」を加えた四方良しということが一番必要だと思っています。

 先月、まちなかぶんか小屋で、華やかなファッションの世界とブランド衣装を大量生産しているバングラデシュの縫製工場を対比したドキュメンタリー映画「ザ・トゥルー・コスト」を上映しました。工場の女性たちは朝から晩まで低賃金で働かされ、周囲の土地や川には化学薬品が垂れ流されていた。作品から、人も環境も犠牲にされている実態をあらためて知りました。

 唯一の救いは、多少高くても人や自然を傷つけない商品を選ぶフェアトレードというトレンドが広がってきたことです。生産者を支えるために適正な価格で商品を購入することは、まさに四方良しの考え方ではないでしょうか。

 人や環境を大切にする企業や製品を選択する人が増えれば、日本や世界は良い方向に向かっていく。そんな可能性を信じたいと思います。


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