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北極星

福嶋匡洋(羽幌・臨床心理士)*「反抗期」の正体  2016/03/22

 1歳半を過ぎた息子は何かにつけて「イヤ、イヤ」と言い首を横に振るようになった。遊んでいてもうまくいかないと泣いて怒る。ひっくり返って泣くこともあるのだが、頭を打って大泣きして以来、後ろを確認して倒れ込むのが笑える。

 時期や内容に個人差はあるが、多くの子どもは1歳半ごろから4歳ごろまでの間に「第1反抗期」を迎える。反抗期の背景には、「私には私の感情や意志がある」との意識(自我)と、自分の力だけではうまくいかない現状との葛藤がある。気持ちを誰かに伝えたり、頭の中で整理したりする上で、言葉が重要な役割を果たすのだが、この時期の子どもは言葉の理解や表現がまだ拙い。だから行動や少ない語彙(ごい)で葛藤を表現するしかない。玩具を投げる危険行為にも、「イヤ」という言葉や態度にも、実は複雑で豊かな感情が隠れている。問題となる行動は叱りつつ、「○○だったんだね」と気持ちには寄り添いたい。過剰な抑制や無関心は、子どもの自信を奪い自立を妨げる。自己主張や自己判断ができない子どもは従順で育てやすいが、真の意味では育ちにくい。

 息子は、遊んでいて何かがうまくいったときや、お手伝いをしてくれた後に、満面の笑みで「できた!」と言いに来る。親や姉が褒めると抱きついて、もっと喜ぶ。一見正反対に見えるが、これも根っこは「反抗」と同じだ。自分の感情や意志があり、それを伝えたい、受け止めてもらいたいのだ。

 「反抗期」と言うが、それは反抗ではなく成長の証しだ。


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