年明けから続いた羊の出産ラッシュもようやく落ち着いてきた。しかし今年は哺乳(ほにゅう)しなければならない子羊が多く、なかなか忙しい。 大抵の場合、親羊が子育てしてくれるのでお産さえ済めば、その後はほとんど手がかからないものだが、以前かかった乳房炎が原因で母乳が出ない羊や、育児放棄をしてまったく母乳を与えないばかりか、わが子を攻撃する羊がたまにいるのである。こうなると、人間の手で哺乳して育てなければ、か弱い赤ちゃん羊は簡単に死んでしまう。 以前から初産で育児放棄する羊はいたが、今年はやけに多い。いったいどうして、と思いながら、作業日誌を見ていて気づいた。育児放棄をする羊はそのほとんどが親に育児放棄され、人の手で哺乳して育てた羊だったのである。 わが家では、生まれた子羊はほとんど肉用に出荷するのだが、何頭かのメスは繁殖用に残す。これまでは多産系であるとか、体つきの良しあしで選んでいたのだが、ここ2年ほどは父が自ら哺乳した羊に情がわいてしまい、それを繁殖用にと残したのである。 もちろん、残した羊にはちゃんと親羊に育てられた羊もいる。それらはちゃんと産んだ赤ちゃんをかわいがり、大事に育てているのだ。 親が子を育てる、そんな当たり前のことが本当に重要なことなんだと教えられた気分である。救いは、初産こそ育児放棄したものの、いつしか母性に目覚めるのか、2~3年目で普通に子育てする羊もいるということだ。
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