山形県米沢市では2月のこの時期に「上杉雪灯篭(どうろう)まつり」が開催される。市内の松が岬公園を主会場に雪で作った灯籠や雪洞にろうそくをともす催しだ。下川町のアイスキャンドル、名寄市のスノーランタンと同じように雪の中で明かりを楽しむ祭りだが、そこは歴史ある城下町だから「雪灯篭」と古風な名前である。 この祭りの始まりは1978年。「何か雪の風情を楽しむことはできないか」と、市民数人が酒の席で語り合う中で発案されたそうだ。どこの積雪地域でも考えることは共通だ。 この年の2月、私は米沢女子短大の2年生で、後期試験も終わり、後は卒業式を待つだけだった。寮の友人が何やら雪のお祭りがあるらしいと聞きつけて、みんなで出かけた。 すると、上杉神社の参道とお堀の雪洞に無数の明かり。初めて見た雪の中に浮かぶ温かな明かりの大群に私たちは驚き、感動した。就職も決まらないままでブルーな気分だった私の心の中にまでも、明かりがともったような気がした。 あの手作り感満載の祭りは今や会場が拡大され、物産販売やステージイベントも加わり、観光客を集めているらしい。素朴な風情、静寂な空間も良かったのだけど、観光資源となるとそうもいかないのだろう。 貴重な第1回の「上杉雪灯篭まつり」をこの目で見たことが、私のひそかな自慢なのだが、誰に自慢してよいのか分からない。
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