夜間は私の担当―。抱卵するダチョウの雄
今年からダチョウの自然繁殖に向けての試みを始めました。結果を先に言うと、1月からこれまでに25個の産卵がありました。ダチョウはこれらの卵を春と夏の2回抱卵。有精卵を三つ確認できました。残念ながら、ひなはかえりませんでしたが、抱卵の様子や巣の中の大きな卵をご覧になった来園者は多いと思います。 ダチョウは1羽の雄と複数の雌が集団で繁殖をします。雌は同じ巣に産卵するので、巣の中の卵は20個を超えることもあるそうです。抱卵は雄と、雌の中で最も優位な個体の2羽が交代で、約40日間行います。夜間は雄が、昼間は雌が担当します。 抱卵は雄の時間が長いと言われていますが、当園の自然繁殖は初めて。どのような行動をするのか分かりませんでした。巣にいくつか産卵した後に抱卵すると予測し、産み落とされた卵はそのままにしておきました。そして4月、ついに2羽の抱卵行動が始まりました。 5月からは、雄は運動場に出る扉を閉める夕方ごろから決まって抱卵し始め、そしていつも朝の開園時間に扉を開けると、卵から離れました。夏の抱卵で、夜間の様子を観察すると、静かな室内で雄はじっと抱卵していました。 一方、昼間が担当の雌はというと、卵をほぼ放置。抱卵が確認できたのは数回だけでした。卵が放置されている時は、来園者から「なぜ卵を抱かないの」と多くの質問を受けました。世界一大きな卵がいくつも地面に並んでいるのですから、驚きますよね。繁殖について多くの方が興味を示す機会となり良かったと思っています。 今年の産卵はもうないと思いますが、雌の抱卵を促す工夫が今後の課題となりました。巣は来園者からすぐ見える位置にあるため、雌は安心して抱卵できないのかもしれません。それともまさか、私のことを最も優位な雌だと思っていたりして…。ダチョウの気持ちを聞きたいものです。(ダチョウ・イボイノシシ担当 田中千春)
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