北海道産動物舎で展示しているクマタカのペア。ここ数年、繁殖に成功しているつがいで、今年も4月末ごろから抱卵を始めていました。大事そうに卵を温めている親鳥の姿をモニターで毎日見ているうちに「無事にふ化するといいな」という気持ちがどんどん強くなっていきました。そして、6月11日の朝、いつものようにモニターを見ると、もぞもぞと動く白いかたまりが! 真っ白でフワフワした体にグレーのくちばし、濃いブルーグレーの瞳のヒナの姿を見た時はとても感動しました。 今年の6、7月は急な大雨が多く、夕方ごろから滝のような雨が降ることが何度もありました。前担当者から、ヒナが大雨に当たって死んでしまうこともあると聞き、雨が降るたびに心配で様子を見に行きました。そして、親鳥が羽を広げてヒナに覆い被さり、ずぶぬれになりながらヒナを守る姿をモニター越しに確認するたびに、親鳥の愛情に心を打たれました。 8月中旬になるとヒナはかなり大きくなり、羽もほぼ生えそろい、巣の縁に止まっている姿が見られるようになりました。そろそろ巣立ちかと毎日様子を見ていたのですが、ヒナは巣から降りようとしません。親鳥が巣の近くの木に止まってヒナを呼んでいるような様子も見られたのですが、その後もしばらく大きな動きはありませんでした。 8月29日朝、給餌のためにクマタカのケージに行くと、ヒナの姿が見当たりません。モニターで巣の中を確認しても姿を見つけることができず、ケージ周辺をぐるっと見て回ることに。するとすぐに、草やぶに隠れた(つもりの)ヒナの姿を発見しました。巣から落ちた衝撃で翼などを骨折する個体もいるのですが、見たところけがはなさそうです。翌朝には少し高いところにある木の枝に止まり、自力で巣に戻っていく姿も確認できました。 今、クマタカのヒナは、ケージ内を自由に飛び回っています。ぜひ、秋の過ごしやすい青空の下、北海道産動物舎でクマタカのヒナを探してみてください。(猛禽(もうきん)類担当 鎌上塁)
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