冬毛に雪を積もらせて身を寄せ合うニホンザル(打田達也撮影)
冬期間、すっかり“雪山”となる「さる山」には、82匹のニホンザルが暮らす。寒さから守るように母親が子ザルをしっかりと抱きしめる姿に心が温まる。 個体差はあるが成獣の雄の体長は約55センチ、体重約15キロ。顔と尻が赤いが、11月から2月にかけては繁殖期のため、この時期は特に赤い。体毛は茶色だが、北に生息するものほど白い。 日本の固有種で、サルの仲間の中で世界で最も北に暮らす。集団で身を寄せ合う姿は「サルだんご」と愛らしく呼ばれており、「厳しい寒さの中ではそうしないと生きていけないんでしょうね」と飼育担当の鈴木悠太さん(30)は言う。 冬は食欲旺盛。82匹の餌は1日に野菜と果物を25キロ、ペレット9キロ、おやつにトウモロコシなどの種子10キロ。「気温が低いので体温を維持するためにたくさん食べます」と鈴木さん。 群れには序列があり、旭山では雄雌ともに最上位を「第1位」ザルと呼ぶ。順位の低いサルが高いサルに場所や餌を譲ることで、けんかが起こりにくくなるというが、これは「群れを維持するための機能」(鈴木さん)だそう。どこか人間社会にも通じるところが面白い。 第1位の雄は昨年11月ごろに交代したばかり。6年以上トップだった「ホワイティー」が争いの末に死に、2位だった名前のない14歳の雄が頂点に立った。 ところでサルは木の上で生活する姿を想像するが、ニホンザルは前足の肩の部分を回すことができず、チンパンジーのように腕だけで木の枝などにぶら下がって移動できない。4本足を巧みに使い綱渡りのように動く姿は消防のレスキュー隊のようだ。また地上で生活する時間が長く、お尻に座布団の役目の二つの「尻だこ」があるのも特徴だ。 旭山では、日本の古き良き里山の再現を目指し、サルとニホンイノシシを「共生展示」する計画を2017年に立てたがまだ実現していない。捕獲を依頼している旭川市の姉妹都市・鹿児島県南さつま市で健康な個体が捕まらないためだ。 鈴木さんは言う。「実現すれば新しい刺激になる。ちょっとした緊張感が生まれてサルたちの生活がよりよくなるんじゃないでしょうか」(宗万育美)
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