北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

 カモの親子*小さな体に命の輝き    2018/08/06
ととりの村で仲むつまじく過ごすマガモの親子

 今春、動物園に異動してきて、早いもので4カ月が過ぎようとしています。直前は生活保護課のケースワーカー、その前は美術館の学芸員をしており、まさか自分が飼育員になるとは思ってもいませんでした。


 上司の福祉保険部長から異動先を聞いた時は、今までの人生で3番目くらいに驚きました。前職は完全な事務職です。一日のほとんどの時間を座って過ごしていたため、体はなまりきっています。動物園に異動してきてから1週間は、慣れない肉体労働で体中の筋肉痛に苦しみ、体重も6キロ落ちました。

 現在私が担当しているのは水鳥が暮らす「ととりの村」です。5月から7月の繁殖シーズンには、水鳥のひながすくすくと成長する姿を見ることができます。ととりの村は今年リニューアルオープンした施設。昨年は改修工事をしていたため、鳥たちが今春、外の放飼場に出たのは1年半ぶりでした。

 建物内で繁殖期を過ごした昨年は繁殖がうまくいかず、ひなの姿は見られなかったと前の担当者から聞いており、「そんなにブランクがあって大丈夫なのだろうか」と思っていました。でも放飼場に出たカモたちは、すぐに巣箱や地面に産卵。5月上旬には抱卵を始めました。マガモ、カルガモの抱卵日数は、およそ28日。予定日の1週間前くらいから、「まだか、まだか」とやきもきしながら毎日を過ごしました。

 自分の子どもが生まれる時も、同じような気持ちだったなと、今になって思います。6月上旬、母鳥の後ろをついて泳ぐマガモのひなの姿を初めて見た時には、とても安心しました。このときふ化したひなは、もう親鳥と同じ大きさに成長しています。

 ふ化してから飛べるようになるまで2カ月程度。もうじき施設内を飛び回る姿を見ることができるでしょう。毎日ひと回り近く大きくなるマガモ、カルガモの姿に、小さいながらも必死に生きている命の輝きを感じ、責任を持って飼育しなければいけないと強く感じています。(ととりの村担当 鎌上塁)


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