巣立ちを終え、枝にとまるシマフクロウのひな(打田達也撮影)
今春、旭山で初めて自然繁殖でふ化したシマフクロウのひな2羽がすくすく育ち、巣立ちの季節を迎えた。5月31日に1羽目が巣から飛び出したのをスタッフがビデオモニターで確認。6月2日にも2羽目が巣立った。いま仲良く並んで枝にとまる姿も見られ、なんともほほ笑ましい。 国の天然記念物で絶滅危惧種。ロシアや中国東北部、日本では北海道のみに生息する。しかし、森林伐採や河川汚染によって数は激減。道内では明治初期に千羽以上いたのが、現在は約160羽程度にとどまる。 そんな希少種だけに、繁殖の成功は悲願だった。2羽の親、雌のモコ(7歳)と雄のロロ(21歳)は、1995年に自然繁殖を成功させた実績を持つ釧路市動物園から、2016年に来園。モコは昨年も産卵したが、無精卵でふ化は失敗。繁殖挑戦2年目となり、「飼育環境に慣れてくれたのでは」と飼育担当の池谷優子さん(44)は喜ぶ。 ふ化は4月9日と13日。直後のひなの体重は約100グラムだったが、今では約2キロ。保温性に優れた綿のような灰色の幼羽から徐々に生え替わり、9カ月で成鳥になるという。成鳥は体長約70センチ、体重約4キロ、翼を広げると約180センチにもなる。「ワシミミズクと双璧をなす世界最大級のフクロウですから」と池谷さん。2羽の性別は今後のDNA検査で判明する。 巣立ったひなはまだ飛ぶことはできないが、歩いたり跳ねたりして枝に登り、元気そう。両親は少し離れたところから、いとおしげにひなを見守る。坂東元(げん)園長は「これから飛ぶ練習や自分でえさを捕る練習をしなければならない。守っていきたいですね」とひなの成長を願う。 シマフクロウの寿命は約30年。親子4羽の仲むつまじい様子がしばらく園内で見られそうだ。 北海道の森で暮らすシマフクロウの姿を前に池谷さんは言った。 「ひなの姿に感動し、シマフクロウを知ってもらうことが第一歩。そこから地元の生き物に関心を持ってもらえれば」(宗万育美)
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