北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

 変わるこども牧場*「命を食べる」考える場に    2018/03/12

「命の大切さを食育という観点からも伝えられる場にしたい」と話す佐賀さんと羊

 動物と触れ合うことで、命の重さや温かさを体感してもらう「こども牧場」。この施設が伝えるテーマに2018年度、新たに「食育」が加わる。

 こども牧場は旭山の入園者数が過去最低の約26万人に落ち込んだ翌97年に完成した。これまでに羊やヤギのほか、ポニー、シマリス、モモンガなどの小動物を集めてきた。ウサギなどの抱っこ体験もでき、野生動物とペットや家畜の違いを伝える。そのテーマは動物に触れて学ぶ、いわば「触育」だった。

 一方、「食育」は人が動物の肉を食べるという現実を前提に「普段、動物と触れ合わない子どもたちに、自分が食べている肉の生きている姿を知ってもらいたい」(坂東元園長)という発想でスタートさせる。

 北海道の郷土料理「ジンギスカン」を考えてみる。言うまでもなく、それは羊肉。試験的に本年度、牧場内の羊の飼育場横に手作りの看板を設置した。木の看板を1枚めくると料理の絵と、ラム(生後1年未満)とマトン(生後1年以上)の違いの説明を並べた。担当飼育員の佐賀真一さん(38)は「ぎょっとする人もいるようですが、これで初めてジンギスカンが羊だと知ったという子どももいます」と話す。

 現在、牧場ではモルモットやウサギ、ヤギや鳥類も飼育する。海外の食習慣などを考えると、そのいずれもが食用になる。牧場内には「食べる」という行為を通じ、人と動物の関係を考える素材が豊富にあるとも言える。

 加えて旭山は旭川市の18年度予算で、牧場内で暮らすニワトリやアヒルの鶏小屋を改築し、新たに独立した施設を作るほか、ブタなど食と関わりの深い動物を新たに迎え入れたいとも考えているという。

 牧場は2006年、「第2こども牧場」を設けて面積を拡大。高所を好むヤギのためにヤグラを作って、動物本来の姿を見せる行動展示の工夫も凝らす。こうした従来の取り組みは、引き続き継続する。

 佐賀さんは言った。「触れて命の温かさを知り、手作り看板で命を食べるということを知ってもらう。そんな牧場にしたい」(川上舞)


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