ちんぱんじー館で暮らすチンパンジーのキーボは、今年50周年を迎えた旭川市旭山動物園とほぼ同じ年の49歳の雄。園内の動物で最高齢だ。チンパンジーの平均寿命は40~50歳といい、いわば“大長老”。現在は二つの群れの一方のリーダーを務めながら子や孫に囲まれて穏やかに過ごすが、過去には争いに敗れて大けがをしたこともある。 野生では主にアフリカの赤道付近に生息するチンパンジーは寒さに弱い。旭山は11月3日に夏季営業を終え、11日から冬季営業がスタート。キーボはその冬の間、ちんぱんじー館内で生活する。群れは6匹ずつ二つに分かれている。 1974年、おびひろ動物園からやってきた。体重約70キロ。チンパンジーの中で特に体が大きいわけではないが、それでもリーダーになった理由は「来園したとき他に雄がいなかったから」と飼育担当の丸一喜(かずのぶ)さん(46)は笑う。おびひろ動物園で1匹だけで飼育されていたキーボは非常に臆病でわがままだったが、旭山で伴侶となる雌のゴクウの「内助の功」もあり、立派な雄に成長した。 いまだに食べ物を独り占めしたり、屋外施設へ出る時に若いチンパンジーに先に様子を見に行かせたりと、リーダーらしからぬ行動も目立つ。だが、雌にケガをさせることもなく、じゃれつく孫の面倒を見るなど、心優しい一面も持つ。 過去には序列争いに負けた経験もある。2006年に息子のシンバと争い、鼻の下が裂けるけがをした。周囲のチンパンジーもキーボに従わなくなり、一時は群れから隔離。坂東元園長は「一日中焦点の定まらない目で空を見つめていた」と当時のキーボを振り返る。ただその後、群れを二つに分けたところ、みるみるうちに元気になり、リーダーに返り咲いた。 キーボは旭山が閉園の危機にあった時も、全国的なブームの時もずっと園とともに歩んできた。寄る年波には勝てず、腰回りも細くなり、体全体も小さくなりつつあるが、丸さんは「まだまだ元気に群れを引っ張っている。長生きして生涯リーダーを務めてほしい」と話した。(川上舞)
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