北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

 改修中の「ととりの村」*狭かった? 水鳥繁殖出来ず    2017/07/03
「ととりの村」が改修中のため、室内で過ごす水鳥たち=旭川市旭山動物園提供

 7月1日、旭山動物園は開園50周年という大きな節目を迎えました。

 この記念すべき時に「ととりの村」は改修工事中で、残念ながら水鳥たちは外に出すことが出来ないため、来園された方々はカモなどの水鳥をご覧になることが出来ません。例年、この5~7月は繁殖時期であり、6月中旬すぎにはカモのヒナも誕生し、すくすくと成長してゆく姿を観察することが出来ていました。

 しかし本年度、水鳥たちは建物内でこの時期を過ごすこととなり、繁殖時期を室内で迎えることになりました。今回、巣箱の設置や小さいけれどもプールの水替えなどに気を使いながら繁殖を期待していました。しかし、外の放飼場と比べると狭い室内の環境は、越冬期では問題ないのですが繁殖期には飼育数が多すぎるようで、カモたちの巣作りや産卵行動がほとんど見られませんでした。

 そして6月末、雌はほとんど産卵もせず、雄は外見が雌の様に変わるエクリプス羽(非繁殖羽)に羽が変わってしまいました。繁殖時期が過ぎてしまったことを表します。残念ですが本年度はヒナの姿が見られません。来年に期待することとなりました。

 ここで頭に浮かんだのは自分が動物園に入った頃に先輩に言われた「飼育動物が繁殖するということは、その動物が落ち着ける環境にいるという指標になるんだ」という言葉。

 私たち飼育スタッフは動物を第一に、という事を念頭に飼育していかなくてはなりません。今後もし、また同じように室内での繁殖時期を迎えたときには、失敗した経験を生かして、また違う手法をとることが経験であり、積み重ねた事を後の旭山に残してゆくことが大事なのだと思っています。

 開園して50年が経ち、開園当時と比べると動物園としての存在意義は変化しています。旭山は行動展示が有名になりました。それは今まで先輩方が築き上げてきたものが根底にあります。動物が本来持っている能力に興味を持っていただき、そこから動物と人とのつながり、そして身の回りにある豊かな自然に気づいてもらえるよう、動物を通して伝えていく努力をしていきたいと思っています。(飼育・ととりの村担当 高橋伸広)


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