土掘りが大好きなイボイノシシのドゥニア
カバやダチョウが暮らす「かば館」内に、イボイノシシ1頭がいる。国内では旭山のほか富士サファリパーク(静岡)でも飼育されているが、間近で見られる機会は少ない動物だ。 2歳の雄ドゥニア。2015年9月、生後半年で米国からやってきた。「カバの赤ちゃんがいる」「サイじゃないの?」。来園者が思わずこう口にするのは、体毛の薄いベージュ色の肌、長さ約20センチの真っ黒なたてがみ、目の下と頬に名前の由来になっている2対のイボ、上に向かって伸びる上あごの犬歯などの特徴のためだ。 荒々しいイメージだが、担当の飼育員田中千春さん(44)は「人間の手で育てられ、とても人なつっこい」とドゥニアの性格を言う。人が近づくと寄ってきて、アクリル板に体をこすりつけたり、鼻をぶつけたりして存在感をアピール。おもちゃの丸太を鼻で投げたり、泥遊びをしたり、来園者を楽しませてくれる。 イボイノシシは本来アフリカに生息し、体長は100~150センチ、体重は約100キロ。顔のイボは雄同士の決闘で牙でケガするのを防ぐため、固く突き出たとされる。野生では見晴らしの良い土地を好み、丈夫な鼻や前足で穴を掘り、逃げ込んだり寝たりする。ドゥニアも穴掘りが大好きだ。その習性を利用して、子ども向けイベントでは、サツマイモやニンジンなどの好物を土に埋め、穴掘りの様子の観察などもしている。 旭山にとってイボイノシシの飼育はドゥニアが初めてで、「餌の種類や病気への気配りなど、手探りでの飼育は緊張の連続です」と田中さん。飼育方法を富士サファリパークに問い合わせたこともある。ドゥニアはすくすくと育ったが、太らせないよう食事管理には気が抜けない。 ちなみにドゥニアという名前の意味はスワヒリ語で「大地」を意味する。イボイノシシは逃げ足が速く、時には時速数十キロで駆けることができる。まさに大地を「猪突(ちょとつ)猛進」。飼育場内では「逃げる」必要がなく、それほど猛スピードで走ることはないが、運が良ければそんな姿にも出合えるかもしれない。(川上舞) |