ナージャ(左)とソーン(右)。大きいけどまだ1歳です
昨年の4月8日にアムールトラの子が2頭生まれました。当園初の繁殖となり、報道公開や愛称の一般公募、メディアの取材対応など、あわただしい1年を過ごさせていただきました。飼育係にとって、担当動物の繁殖を注目してもらえることはこの上ない喜びです。まさにうれしい悲鳴でした。 早いもので、あれから1年。雄のソーン、雌のナージャともに、母親ザリアとほとんど変わらない大きさにまでなりました。トラの成長の早さに、あらためて驚かされます。 1年前の今ごろ、アムールトラの出産を控え、期待と不安でいっぱいだった自分を思い出します。飼育係は最悪の事態も想定しなければなりません。ある意味ネガティブな考えばかりが頭をよぎります。特に、一昨年に生まれた3頭の子はすべて死亡した経験があったので、心配はより大きなものでした。 無事生まれてくるだろうか。子の身体は健常だろうか。母親はちゃんと育児するだろうか。病気などせず元気に育つだろうか。初めて展示場に出た時、思わぬ事故でけがしたりしないだろうか…。 そうした事態をできる限り予知し、予防や準備することによって、結果的には何事もなく無事育ってくれました。いま目の前にいる母子3頭。もはやどれがどれやら見分けがつかないほど同じ大きさになったことがその証しです。 もしタイムマシンがあるなら1年前の不安だった自分のところへ行き「大丈夫! 1年後こうなっているよ」と今の写真を見せてやりたい、そんな気分です。 大型肉食獣には、生態系のバランスを保つという役割があります。しかし野生のアムールトラは、毛皮目当ての密猟や環境破壊によって絶滅にひんしており、野生での生息数は約500頭と推定されています。 遠くロシアの山奥で、人知れず命をつないでいるアムールトラたちがいる。動物園のトラから、野生の彼らの仲間たちの存在や、その大切さを感じていただければうれしいです。(もうじゅう館担当 大西敏文) |