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旭山動物園わくわく日記

エゾタヌキとアライグマ*見分け方 前足に大きな違い   2017/02/06

 エゾタヌキとアライグマ。個体にもよるが、ともに体長約50~60センチで、体は丸く、顔も似る。ちょっと見ただけでは判別しづらい。だが、よく見比べると、習性も、顔や体の特徴も意外なほど異なる。そんな2種の違いを観察できるのが、北海道産動物舎だ。

 同動物舎は2012年11月にリニューアルした。その際、この2種の放飼場を隣り合わせ、左右対称に造った。「どっちが、どっち?」。その見極めポイントを紹介しよう。

 大きな違いは前足。アライグマは人間やサルと同じように長い指5本を持ち、器用に物をつかむ。この前足を水の中に入れて餌を探る姿が、何かを洗っているように見えるのが名前の由来なのはあまりに有名だ。

 一方、エゾタヌキの前足には猫や犬のように肉球がある。このため木登りが得意なアライグマに対し、エゾタヌキは不得意という。

 それもそのはず、アライグマはその名の通り「アライグマ科」に分類されるが、エゾタヌキは「イヌ科」。体の特徴も習性も違うのは当然だ。

 顔やしっぽでみると、アライグマは額に黒いラインがあり、耳のふちとヒゲが白く、しっぽがしましま。エゾタヌキは、ヒゲも耳のふちも黒く、しっぽに柄はない。

 行動も違う。例えば、前足が入るほどの穴を開けた浮き玉におやつを入れて与える。エゾタヌキは前足で浮き玉を転がして穴からおやつを出し、地面に顔を近づけて食べる。アライグマは穴に前足を突っ込んで取り出し、長い指でつかんで食べるのだ。じっと見ていれば他にも多くの違いが見つかるかもしれない。

 忘れてならないのは、在来種のエゾタヌキに対し、アライグマが外来種で、野生では農作物を食い荒らし、害獣として扱われていることだ。1970年代のテレビアニメの影響で、ペットとして飼われたアライグマはブーム後に捨てられ、野生化した。

 「人間に勝手に連れてこられ、捨てられ、害獣だとされる。その現状も知ってもらいたい」と同動物舎担当の佐藤和加子さん(35)。2種の違いを観察しながら、そんな事実に思いをはせるのも大切だ。(川上舞)


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