北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

エゾシカ*角で分かる群れの序列   2017/01/09
立派な角を持つ鶴岡(手前)や子鹿など8頭が暮らすエゾシカの森

 温厚なイメージの強いエゾシカ。じっとこちらを見つめる優しそうな目からは想像しにくいが、群れには他の動物と同様に序列があり、トップに立つ雄はハーレムをつくる。

 その頂点を決める重要な要素が、角の形や大きさ。角を持つのは雄だけで、生後1年から生えてくる。1歳の時は枝分かれしない。だが、2歳を超えると枝分かれし、多くの人が知る頭の上にV字のように広がる立派な角になっていく。

 角は毎年生え替わる。3月の終わりから4月初めごろに抜け落ち、その後に新たな角が生える。生えたての角を「袋角(ふくろづの)」と言い、短い毛がびっしり。血が通っているため、温かく柔らかい。徐々に堅くなり、薄皮がはがれ、秋頃までに堅い角に成長するのだ。

 「新しい角に生え替わる前に、ぜひ一度見に来てほしいですね」とエゾシカ飼育担当の中野奈央也さん(28)。冬の今は、成長して長さ数十センチを超える立派な角が見られ、「雄が雄らしく、雌が雌らしくある季節」(中野さん)だという。

 園内の「エゾシカの森」に現在暮らすのは8頭。子鹿2頭を含み雄が6頭、雌が2頭で、トップが「鶴岡(つるがおか)」(雄、推定11歳)だ。ハーレムの主はハレムブルと呼ばれるが、鶴岡はその座に君臨する。見事な角を持ち、食事も雌も独り占め。抜け駆けする別の雄がいないか、常に目を光らせる。

 だが、トップの座が覆ることはないのだろうか。

 群れには発育不全で体格も小さく、角も細く短い「ミズナラ」(雄)がいる。エサの時間でも鶴岡が近づくと、エサを諦め、逃げていく。序列は明らかだ。

 だが、もし毎年生え替わるミズナラの角が鶴岡よりも強く立派なものになったら…。「体格の差も関係するが、可能性はないとはいえない」と中野さんは条件次第でトップ交代があり得ることを教えてくれた。

 今年も雪解けが近づくころ、今の角は抜け落ち、また半年ほどかけて新たな角となる。

 権力の象徴のエゾシカの角。それを眺めつつ、群れの中の力関係を想像するのも動物園の楽しみ方の一つだ。(川上舞)


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