生後2カ月半ほどたち、展示中も慣れた様子を見せる双子の赤ちゃんトラ(大島拓人撮影)
旭山動物園に4月8日、アムールトラの赤ちゃんが誕生した。米国の動物園から2014年に来た雄のキリル(7歳)と雌のザリア(6歳)の間に生まれた雄と雌の双子で、旭山での繁殖成功は初めて。今月15日には一般公開も始まり、愛らしい姿を見せている。 ザリアは昨秋初めて4頭を出産したが、育児放棄してしまったため、生後間もなく全て死んでしまった。今回の成功に飼育担当の大西敏文さん(42)は「本当に素晴らしいこと」と感慨深げだ。 アムールトラはロシア極東部に生息し、雄は体重150~300キロ、雌は100キロにもなる世界最大のネコ科の動物。密猟や環境破壊の影響などで野生ではおよそ500頭弱しかおらず、絶滅危惧種に指定されている。動物園で暮らすトラも世界中に500頭程度で、世界動物園水族館協会(WAZA)によって全頭が血統管理されている。 旭山には国内最高齢の雌の「ノン」(20歳)もおり、かつて雄の「いっちゃん」(09年死亡)とのペアリングを目指したが、失敗。2頭は人工保育で育ち、人に慣れ過ぎていたため、繁殖が難しかった。02年からの6年間、人工授精にも取り組んだが、当時世界で3回しか成功例がなく、うまくいかなかった。 今回誕生した双子は出生当時1キロ程度しかなかったが、現在は9キロ、体長50センチにまで成長。雄の方が雌より活発で、予防接種を打つときにはうなり声を上げたりもしていたという。展示スペースでは自由に走り回ったり、じゃれ合ったりとかわいらしい。 展示はザリアと双子、ノン、キリルの3交代で行っており、当日朝に旭山のホームページで告知している。双子を見られなかった来園者の中は「赤ちゃんじゃなくてがっかり」「どうして毛並みの悪いおばあちゃんのトラなの」との不満を口にする人もいるという。 飼育下にあるトラの寿命は約20年と言われており、双子たちも3年ほどで大人になり、老いていく。大西さんは、来園者が双子だけでなく、ノンやキリルの姿を見ることで、旭山でのアムールトラ繁殖の成功までの歴史に思いをはせてほしいと願う。(笠原悠里) |