池谷さん(左)の腕に乗り、愛らしい表情を見せるワシミミズク
「フクロウの耳ってどこにあるか、分かりますか。音だけで狩りができるほど、優れた聴覚を持っているんです」。旭山動物園の獣医師、池谷優子さんがフクロウの一種ワシミミズクを左手に乗せ、集まった客に生態や特徴を解説した。「なるほどガイド」という不定期の催しで、3カ月の訓練を受けた“手乗りフクロウ”が見られる。 ワシミミズクは最大で雄は3キロ、雌は4キロ、羽を広げると1メートル75センチもの大きさになる。道内にもごくわずかながら生息するが、環境省のレッドリストで、ごく近い将来に野生での絶滅の危険性が極めて高い絶滅危惧ⅠAに分類されている。 池谷さんの「相棒」は、旭山で2010年4月に生まれ、「公式な名前はないけど、目が特徴的で真ん丸なので『玉』(ギョク)と呼んでいます」。父と母は通常、「北海道産動物舎」で展示されているが、ギョクはその裏のスペースにいる。昨年9月から人に慣れさせる訓練を初め、12月からガイドで紹介している。 普段の食事はニワトリの雄のヒナ6~7羽だが、訓練中は体重を量り、反応を見ながら絶食させ、体重を3割ほど減らす。そうすると、空腹のあまり人の手からでもエサを食べるようになり、徐々に人への恐怖がなくなって近づきやすくなるという。池谷さんは「絶対に人の手からは食べないという頑固な子もいますが、この子は大丈夫。あまり鳥の訓練をしたことがなく我流のやり方でしたが、今ではすっかり人にも慣れてくれました」と話す。 15分ほどのガイド中は、観客と数十センチの距離まで近づいてもおとなしく腕に止まり、きょろきょろと辺りを見回す余裕も。時々ニワトリのヒナをご褒美にもらうと、ぺろっと丸のみする豪快さも見せる。観客からも「こんなに近くで見られて面白い」など評判が良く、いずれは「フライト」と呼ばれる飛行訓練にも挑戦する予定だ。 池谷さんは「目の前で見てもらうことで、多くの人に生態や魅力を知ってもらうきっかけづくりになれば」と期待する。ガイドは道産動物舎前で行っており、当日朝に旭山動物園のホームページで確認できる。(笠原悠里) |