大きなオレンジ色の目を見開き、周囲を見渡すエミュー
飛べない鳥として知られるエミュー。現在、旭山動物園にいるのは29歳の雄の1羽のみ。以前は同じく飛べないダチョウとともに旧総合動物舎で飼育されていたが、2013年にダチョウが「きりん舎・かば館」に引っ越した後は、旧動物舎を「エミュー」と改称し、1羽で暮らしている。 エミューはオーストラリア全域に生息しており、オーストラリアの国鳥でもある。旭山は同じ地域で暮らす動物を一緒に飼育する「共生展示」に取り組んでいるが、園内にオーストラリアの動物がほかにいないことも単独飼育の理由になっている。 たった1羽で広い獣舎を使っているため、寝る時は寂しいのか寝室の隅にいるという。ただ、もともと野生のエミューは繁殖期以外は単独で行動する。雌が産んだ深緑色の卵を雄が抱卵し、5~7カ月でヒナは雄から離れ、独り立ちする。 日中、園内では敷地内をせわしなく動き回る。長い首を縮めたり、伸ばしたりしながらオレンジ色の瞳を見開いて遠くを気にする。「何を考えて生きているのかな」と担当の阿部千佳さん(54)も首をかしげる。 4月からエミューの担当になった阿部さん。エミューの寿命は20~30年で、もう若くはないが、敬意や親しみを込めて「エミューさん」と呼ぶ。「動いている様子がかわいらしくて『ゆっくり食べなさい』『いい子だね』など、ついつい話しかけてしまいますね」。エミューはいつも獣舎外の観客のそばをうろうろし、カメラにも反応し、サービス精神旺盛。ファンも多く、もぐもぐタイムにはたくさんの観客が集まる。 リンゴを1日1・7キロも食べる。小さな頭を上下に振り、1センチ角に切られたリンゴを一つ一つついばむ。年のせいかサツマイモや白菜などえさの一部を残してしまうこともあるが、病気もせず元気いっぱい。 寒暖差に強く、冬場もへっちゃらで、元気に動き回っている姿が見られる。「ぜひ雪の中を元気に動くエミューも楽しみにしていてください」。阿部さんはこう呼び掛けている。(古谷育世) |