北海道新聞旭川支社
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旭山動物園わくわく日記

ニホンザル*「老い」を支える母系社会    2015/09/07
仲間からグルーミングを受けるメス第1位のニホンザル

 旭山動物園の「さる山」では、今年もたくさんの子どもが生まれました。最近では、親が子に対し、熱心にグルーミング(毛づくろい)をしている姿や、子ども同士で遊んでいる姿を見るようになりました。群れはとてもにぎやかです。子どもは話題になりやすいですが、今回は「老い」について紹介します。

 今から24年前、旭山動物園でニホンザルのさる山を作るときに、北海道の各動物園から2~4歳のニホンザルを集めました。その時にやってきたニホンザルが、現在も2匹います。1匹は群れの第1位のメス、もう1匹は最も低い位置にいるメスです。今年で2匹とも27歳になりました。ニホンザルの寿命がだいたい30年ぐらいだといわれていますので、もうすっかりおばあちゃんです。

 最近、1位のメスが体調を崩してしまいました。治療をし、少し改善が見られましたが、全快には至っていません。良くなってもらい、もっともっと長生きしてもらいたいです。

 気にかけることが多くなったからか、最近こんな発見がありました。体調が悪いので、じっとしていることが多い1位のメスに対して、娘や孫たちが熱心にグルーミングをしている様子を多く目撃します。3匹がこぞってしている時もあります。グルーミングをされている時のメスはとても気持ちよさそうです。そこには確実に親子のつながりがあります。ニホンザルの社会は、オスはある程度の年齢になると、違う群れに移動し、メスは生まれた群れで一生を過ごす母系社会です。このような親子のつながりが、ニホンザルの母系社会では重要なのかもしれません。

 生き物はいつか老いて死んでいきます。動物たちは最後まで生きることを諦めません。ぜひ、動物園で命と向き合ってみてください。懸命に生き抜こうとする彼らから学ぶことは多いのではないでしょうか。子どもがいる、おばあちゃんがいる、だからこそ知ることのできるニホンザルの社会を見に、ぜひお越しください。(ニホンザル・アザラシ担当 鈴木悠太)


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