一番奥がワピチの「サチ」、手前が同居する3頭のトナカイたち(旭山動物園提供)
ワピチ舎では、「サチ」という愛称の雌のワピチを1頭飼育しています。サチは今年30歳を迎え、脚の関節が弱っており、昔と比べると、放飼場の奥で座っている時間が長くなってきました。また、歯が摩耗しており、臼歯が抜けてしまっている部分もあるので、餌を薄切りにし、関節痛に効くサプリメントなどを与えてケアをしています。 そのワピチ舎に今月4日、新しい仲間たちがやってきました。旭山動物園では7年ぶりとなるトナカイです。雄1頭、雌2頭の計3頭で、春から準備を進めてきました。輸送する箱を作ることから始まり、寝室となる部屋の大掃除、搬入後に環境に慣れさせるためのサブパドックの整備、餌台作りなどの作業に追われました。 そして搬入当日。輸送箱に入ったトナカイをトラックから降ろし、サブパドックに放します。トナカイたちは今までと違う環境に戸惑い、柵から出ようとしたり、飼育係を警戒したりしましたが、数時間後には環境に慣れ始めたようでした。ワピチ舎には、トナカイが歩くときに鳴る「カチッ、カチッ」という音が響き、「また、ここでトナカイの飼育ができるんだ」とあらためて実感しました。 その後はトナカイをサブパドックで飼育し、サチとのお見合いが始まりました。導入が決まった時から、以前と同じくワピチとの同居を考えていたのですが、サチも高齢になり、同居による精神、肉体的な負担も懸念されます。少しでもサチに負担がかかるようであれば同居は中止にする予定でした。しかし、そんな心配もよそに、サチは落ち着いた様子で与えた餌をいつも通り完食、放飼場奥のお気に入りの場所でのんびり座っていました。お互い柵越しに近づいても威嚇することもありません。飼育係が近づくといつも威嚇してくるのに…。 10日に同居が可能と判断し、同居展示を始めました。現在は一緒に餌を食べ、サチのお気に入りの場所で一緒に座って休んでいることもあります。この姿を見て、やっと安心することができました。亜寒帯林に暮らすワピチとトナカイ。雪の中での姿も楽しみです。(ワピチ・トナカイ担当 佐橋智弘) |