「潜る潜るタイム」で注目のキンクロハジロ(旭山動物園提供)
ぼくの担当「ととりの村」では、夏期にはハクチョウ、ガン、カモ合わせて200羽以上の水鳥を展示しています。しかし冬期は閉鎖されており、水鳥たちはバックヤードの建物内で飼育しています。 自分の担当動物が、半年間まったく来園者の目にとまらないというのは、ちょっと寂しい。そこで、ヒナの頃からぼくが育てたキンクロハジロというカモを使い、かば館内を間借りしてのガイド「キンクロハジロの潜る潜るタイム」を始めました。 人が育てた個体なので、来園者が近づいても恐れず、間近で観察していただくことができます。 また、キンクロハジロの仲間は潜水が得意でもあります。野生では水底の貝などを食べるのです。そこで幅90センチ、深さ50センチの水槽を用意し、来園者の前で潜る様子をお見せできるようにしました。 水中での泳ぎ方や、餌を食べる様子、水をはじく羽毛などを来園者に観察していただくことができます。きちんと羽づくろいをしているカモは、水に潜ってもほとんどぬれません。 ときにはカモがバシャバシャと豪快に水浴びして、来園者に水しぶきが飛んでしまいますが…。みなさん、かえって喜んでくださっているようです(笑)。 冬期間もなんとか水鳥を展示しようと、苦肉の策で始めた「潜る潜るタイム」ですが、結果的に、ととりの村では観察できないような水中でのカモの行動を、間近で観察していただけるようになりました。 キンクロハジロは冬には日本に飛来する、わたしたち日本人にとって身近な野鳥です。 ちっぽけなカモも、知られざる優れた能力を持ち、厳しい野生をたくましく生きている。外国の珍しい動物をお見せするだけでなく、日本在来種のすばらしさを知っていただくのも、動物園のひとつの役割だと思っています。 「キンクロハジロの潜る潜るタイム」は不定期で行っています。旭山動物園ホームページでタイムスケジュールをご確認のうえ、ぜひ見に来てください。(ととりの村担当・大西敏文) |