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仲間と一緒にのんびり過ごすエゾシカのぺろ(右) |
まぶしい残暑の日差しに体を丸め、そっと仲間に寄り添うメスの「ぺろ」。7月に生まれたばかりのエゾシカの赤ちゃんは、最近、その愛らしい姿を来場者の前に現し始めた。 臆病だが好奇心が強く、「見慣れない食べ物や、お客さんの落とし物にはすぐに近づいていく」と飼育係の大越晃さん(29)。 シカは野生では、敵が多い。そのため、母親は赤ちゃんを隠す性質がある。「エゾシカの森」でも、母親のぺぺ子(4歳)はぺろを橋の下や岩陰などに隠し、母乳を与える時だけ近づいていた。8月に入り、ぺろも9頭の仲間と一緒に過ごすことが増えてきた。乳離れの時期も近づいており、草を食べ始めてもいる。この2カ月で体長は1メートル超に成長した。 大越さんは「赤ちゃんはかわいいけれど、野生のエゾシカの問題にも思いをはせてもらえれば」と願う。旭山動物園では毎年のようにエゾシカの赤ちゃんが生まれており、野生でも繁殖率は非常に高いという。大越さんは「このことも、近年食害が深刻化している一因」と指摘する。 エゾシカの森の施設内には、市民らが野菜を育てる小さな畑を設けている。電気が流れる柵で囲っているが、毎年のようにエゾシカが作物を食べてしまう。この状態を見てもらうことも、現在のエゾシカの問題提起だ。大越さんは「エゾシカにとっては、目の前にあるものを食べているだけ。身近な問題だからこそ、いろいろなメッセージを発信していきたい」と話している。(中沢広美)
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